じっと立つということの実態

二字紺羊馬
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少なくとも私の場合は完全には「静止していない」

この数年間の練習で「小念頭を始めようとすると、昔より二字紺羊馬がピタリと決まるイメージを持てるようになった」ということは、もしかしたらこのブログでも書いたことがあるかもしれません。

ただしこのことは、少なくとも私の場合は「完全に静止している」ことを意味していません

私が小念頭を続ける時間は日によって様々で、基本的には20分〜50分の間で行います。昼休み内に済ませる必要があるため、必然的にこの時間に収めなければならないわけですが。ときどき、二字紺羊馬をもじった「二時間要馬」を試したりもすることもあり、これくらいの時間同じ立ち方を続けることは普通は苦行に感じられることでしょう。でも、私の場合は完全には静止しないことで、これをクリアできているのかもしれません。

重心位置がずれる

数年前にコンスタントな小念頭の練習を再開し始めたとき、小念頭実施の間、重心を置く前後の位置が無意識のうちにかなり変わることに気づきました。私が習ったのは土踏まずの中心の真上に重心を置く方法です。それに対して実際に私が小念頭を行ってみると、攤手や護手のときは踵に近い位置に重心がずれ、伏手のときは拇指に近いほうに重心を置く位置がずれる、という感じがしていたのです。そのことに気づいたあとも、とりあえず私は自然に任せて重心位置を取るようにして、今に至ります。最近はほとんど意識しませんが。

ちなみに、習い始めの頃は重心の前後位置だけでなく、上下位置がずれることも多々ありました。特にきつくなってくると、曲げていた膝の角度が浅くなり、時間が経つにつれて重心が浮いてくる、という現象ですね。このことは何度も先生に注意された記憶があります。

実は今でも、ハードなMTBライドをしたあとなどに小念頭をやると、腰が高くなりつつあるのを自分で感じることもあったりします(^^;)。こういうときは無理をせず、時間を短縮したりしているのですけれど。

姿勢を維持するということ

これは私がフィットネス・インストラクターだった経験から述べる私見ですが、人間が重心位置を全く同じ位置に置いたまま、完全に停止することは不可能です。

まず、じっとしているつもりでも、絶えず私たちの体は現在の状態のフィードバックを受け姿勢反射などで微修正しバランスを取り続けているからです。これについては、窓枠なんかに向かって二字紺羊馬を行うとハッキリ理解できると思います。窓枠を注視すれば、窓枠と景色が絶えず微妙にずれるという感覚を体験できるでしょうから。

血流制限

私たちの筋肉は部位にもよると思いますが、最大筋力の50%以上の筋力で筋収縮を続けると、その部位の血流がほぼ止まるという研究があります(ソースの書籍は倉庫にあると思われるので、発見したときに出典を載せますね)。さすがに、二字紺羊馬レベルでは血流が止まってしまうようなことはないと推察されますが、ある程度の血流制限は起こりえます。

あまりに長時間この状態が続くと支えている筋肉群の負荷が大きすぎるため、私が自然に重心位置をずらしてしまうのは、攤手伏手関係なく、微細な動きで一定の血流を確保するためもあるんじゃないかと思います。おそらくは「二時間要馬」を意外にあっさりできてしまうのも、こういう要因があるのではないですかね。他の人はどうかは分からないけど、私自身は別にこれを「悪い」とは感じていません。

ただ、数年前の重心のずらしと比べると、最近は(無意識なこともあるけれども)かなりこのズレは小さくなっているように感じてはいます。

最近は血流制限下での筋力トレーニング(加圧トレーニング、スロートレーニングなど)に関する議論も盛んですが、このような環境下での筋トレが筋力強化筋肥大に一役買うのではないか、という説もあります。二字紺羊馬を初めとする中国武術の馬歩や立禅の訓練は、アイソメトリック・コントラクションという静的な筋収縮形態でのトレーニングではありますが、この血流制限によってある程度似た効果がみられるのかもしれません。

こういった静的鍛錬について「役立たない」と決めつける人もいますが、体験してみれば「下半身強化」の効果を感じることができるでしょう。葉問宗師がまるで枯れ葉のように細い、と評価する人がいますが、あの下半身の安定度・充実度からみても、宗師の下半身は相当な鍛錬度であることが分かります。中国武術には直接的な知見のない運動指導者に宗師の動画を評価してもらったところ、私と同様の評価でした。

詠春拳を離れたところの基本的・詳細なトレーニング理論については、改めて別ブログのhttps://icofit.netでまとめるつもりでいます。(過去に書いたものはhttps://docs.icofit.net に残しています)

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (2件)

  • はじめまして 初めてコメントいたします。 おそらく同世代の方だと思いながら、楽しく拝見してます。80年代?から日本でも詠春拳をしていた方がいらっしゃったことは聞いてはいましたが、実際にお聞きすることは少なく新鮮に感じています。                                      これも大昔の話ですが、学生時代に恩師の元で、加圧トレーニングの実験台になって、毎日血液検査を受けて成長ホルモンを検査していたことがあります。その後、論文を発表され、特許となりましたが、血流制限による刺激他と筋肥大には確かに因果関係があったと自分でも実感してます。                   他方、小念頭を長時間やっていると、たしかに同じような血流制限と開放の感覚、痺れた感覚があるなーとは感じてはいましたが、貴見を拝見して、恥ずかしながら、初めて、それがつながり、気が付きました。                 もともと私も武道が好きで、仕事で香港に長らく住んでいたことから拝師の機会を得て、詠春拳を当地で初めて、いまでも稽古を続けています。昔話含め、詠春拳の話、楽しみに期待しています

    • 新部さん、こんばんは。コメントありがとうございます!
      私は1965年生まれで、詠春拳を実際に習っていたのは1987年〜1988年にかけてのことで、その後しばらくはあまり真面目に練習していませんでした。
      年齢を重ね、高い蹴りなどを昔のようにスムースに出すのが厳しくなってきたなか、過去に習った詠春拳に価値を見いだして、ここ数年間再練習をしています。
      加圧トレーニングの実験に参加されていたのですね! 実際に血流制限と筋肥大の因果関係を体感されたというリアルな情報、ありがとうございます!
      実はここ1年半ほど毎日欠かさず小念頭をやるようになってから、リモートワークで自転車に乗る時間が短くなったにも関わらず下半身が充実してきた理由を考えていたら、もしかしたらそういうことなのかな、と思った次第でした。
      香港で拝師されたということは、日本ではすごく稀少な経験をされているのですね! 私などはかじった程度ですし、小念頭も習っている間に「実はあれは本当ではなかった」と何度も技を変えての再教授をされることがあったので、この型ですら実はまだ本当のことを習っていない部分が残っていた可能性があります。
      もし、私がトンデモなことを書いているようなことがあればご指摘ください。

      今後ともよろしくお願い申し上げます。

      (追記)すでに武館を開いておいでなのですね。失礼しました。

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