二字紺羊馬と大殿筋

二字紺羊馬
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指導者によって異なる股関節周りの筋肉群の使い方

私が毎日の小念頭を行う際は平均的に25〜30分ほど立っています。ということは、その間ずっと、二字紺羊馬で立ち続けることになりますね。

最近いくつかの動画を見て、何人かの指導者の先生方が二字紺羊馬の際に大臀筋を締める方法を解説していたり、また実際にその立ち方を紹介していることに気付きました。例えば足先〜下腿は締める方向にするけど、大腿骨は外側に開く方向に力を注ぐ、というような。それに対して、私の場合は基本的に大臀筋はゆるゆるを目指しています。実際に攻撃したりする際の動作上で初めて、大殿筋には活躍していただければいいのかと感じているためです。

私が小念頭を習った際には、「二字紺羊馬は最小限の力で立って、無駄な力を入れるな」ということを徹底されました。これが、剛柔流空手道で習った、その見た目がとても似ている「騎馬立ち」との違いでした。剛柔流空手道では、騎馬立ちも三戦立ち同様、大殿筋を締め上げるように指導されました。

下半身の筋肉の使い方の分析

では、私がどのように下半身の筋肉群を使って立っているのか、自己分析してみた結果を紹介してみます。

二字紺羊馬では両足先を内側に入れ、軽く膝を折り曲げる形を取りますので、膝はつま先の方向に向かって軽く入ります。この姿勢を保つ際、足首の維持には下腿三頭筋、膝の角度の維持には大腿四頭筋が主に使われます。股関節の維持には、自分で触って確認したところではハムストリングスが使われているようです。個人的には、身体運動学の世界で正式に認知された言葉ではないと思うんですけど、高岡英夫先生が述べておられる「裏転子」という部分でピンポイントで支えているという感覚です。

これに、足先と膝が内側に向かっている関係で重力に従って落ちそうになるのを、股関節の外旋筋群が支えている感じ。これは感覚ですけど主に外旋六筋(梨状筋・上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋・大腿方形筋・外閉鎖筋)のような、奥の、小さな深層筋群(インナーマッスル)がブレーキをかけて姿勢を維持している感じか。こういった深層筋群は姿勢の維持に大きな役割を果たしています。

ただ、立ち初めて時間が経ってくると少し様相が異なってきます。感覚だけではなく、実際に触ってみて感じるのは、外旋六筋に加えて小殿筋中殿筋の参加も強化されていくような感じがします。この段階で小殿筋や中殿筋をリラックスさせようとしても結構難しくなってきている感じですね。いかに深層筋群が姿勢維持に適しているとは言え、10分も20分も出力し続けるのはかなり辛いのかもしれません。そして右手の伏手の2-3回目の頃には気付かないうちに大殿筋まで緊張し始めます。大殿筋は大腿骨の外旋や伸展を司る人体で最も大きな筋肉の一つです。

私の場合はいつも、大殿筋の緊張が強くなって初めて気付くので、その瞬間に大殿筋の力を緩めるように努力します。当初はそれも出来ますが、立つ時間が40分、50分を超えてくると私の場合はそれも難しくなってきますね。私の場合は多少の左右差があり、先に左側の大殿筋のコントロールが難しくなる傾向にあるようです。

このような状況ですから、いかに力を抜くとは言っても時間の経過筋疲労の状況によっては、参加する筋群は変わってくるのだと思います。私のケースでは時間とともに参加する筋群が拡大されてくることが分かりました。深層筋群から表在筋(アウターマッスル)へ。ここまで来ると、剛柔流の騎馬立ちや、何人かの詠春拳の先生がおっしゃっている立ち方に知らず知らずのうちに近づいていっている、ということも言えますね。ただ違うのは、決して大殿筋の収縮を意識的に強化しているのではない、というところです。

長く立つことの効果

前も述べたことがありますが、筋肉の持続的な緊張は血流を阻害するので、周辺の疲労物質がの蓄積が起こりやすくなり、またグリコーゲン脂肪酸、クレアチンリン酸、それらによって合成されるATP、つまりエネルギー供給物質の欠如が顕著になってきます。その結果、筋組織の科学的・物理的破壊が起こると考えられます。当然、それを修復する働きも高まりますが、私たちの体は同様の刺激で大きなダメージを受けることがないよう、以前の状態を超えてさらに丈夫な状態まで筋肉を回復させようとします。これを、超回復(super compensation)といいます。

図らずとも、小念頭は下半身の筋肉を全般的に鍛え上げている、ということになりますね。

もちろん、その効果が通常の筋力トレーニングの効果を上回るという訳ではなく、効率で言ったら単位時間辺りの追い込みができる、スポーツ現場で用いられている筋力トレーニングのほうが遙かに有利であるという理解はあります。ただ、長時間重心位置、姿勢を保とうとする努力に慣れていることは、実際に武術的な動きをするときに重心位置をある程度固めて無意識にコントロールできるようになるのに役立っているような気がします。例えば、組手、スパーリング、黐手などで簡単に腰が浮かなくなる感じ、と言った感じですかね。自分が修行した範囲を守って動けるようになる、応用できるようになるのかな、と感じています。

以上は武術指導者ではない、練習者としての観点であり、正確ではない情報を含んでいる可能性があることもご承知置き下さい。

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