三角・四角・丸

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詠春拳の習熟段階について

私が詠春拳を練習し始めてすぐ、この流派の習熟段階は三角・四角・丸に分けられると聞きました。

(日本における中国武術のパイオニアであった、松田隆智先生も三角・丸・四角について紹介されているそうですが、私の先生がおっしゃるには両者は意味が異なるそうです。)

簡単に言うと、詠春拳では、初心者は三角の段階から入り、熟達して四角の段階に至り、最終的に円熟して丸の段階に到達する、ということです。

三角

詠春拳を始めると、まずこの三角の段階に入ります。この段階では歩法や身法を覚えて、相手に正面から立ち向かわず、外側にずれて死角から対応することを覚えます。なぜなら、この段階ではまだ詠春拳独特の力が練られていないため、正面から相手に立ち向かうのが危険だからです。

上半身はお互いに向き合っていても、一人が相手の中心線を制している状態であり、制している側はどんな攻撃も可能になるのに対し、制されている方は全く攻撃ができない状態になっています。

この外側にずれてセンターを取り合うさまを上から見ると、三角形に構えた者同士が三角形の先端をずらしあって交戦するように見えることから、「三角」の段階と名付けたのではないかと思います。

ただ、力を得たから三角の攻撃を卒業する、というわけではなく、中級者も上級者も普通に使う対応です。三角の段階の人間が、四角や丸の対応をするのは難しい、ということです。

四角

この段階は、詠春拳の独特の力を得て、実力のある相手に正面から向き合っても力負けすることがなくなる段階です。詠春拳同士では四つに組む形になるので、「四角」なのでしょう。まさしく、私が習った当時の先生がこの四角の段階だったと思われます。高校空手の全国大会経験者であり、ウエイトトレーニングをやりこんでいた私も、その圧倒的な力の前に何もすることができませんでした。

その反面、捉えどころのない柔らかさも持ち合わせていて、こちらが力で対応しようにも「力が抜かれてしまう」ような感じを受けることもありました。実は先生、丸の段階にも踏み込まれていたのかもしれません。

最後の段階は「丸」です。詠春拳でどんなに強大な力を練っても、高齢になるとやはり若い層の力に勝つのは難しくなっていくそうです。そこで最終的にはこの段階に行き着き、呑み込むような動きで「四角」に「丸く」対応していくようになるのだとか。当時、先生もまだお若く、この段階を想像できないので、詳しくは説明できないとのことでした。

具体的には、腕を回したり引いたりしながら、自分が回るか、相手を回すかして、相手を崩すという段階とのこと。高度な「丸」を実現するためには、三角や四角の段階を十分に練っておくことが必要とのことでした。

ただ、高齢と言っても50代くらいだと「四角」の超上級の闘いが出来そうです。20代の私の先生が、その上の50代の先生と黐手という詠春拳流のスパーリングをしたときの話で、どうやっても上の先生に力で押しつぶされるし、壁に叩きつけられるし、散々だったそうですから。私の先生も痩せておられましたが、上の先生はさらに枯れ葉のような体形をされていました。実際にこのときの写真を見たことがありますが、私が「強大だ」と思っていた先生の腕が、上の先生によって「くにゃっ」と潰されていました。

高齢の先生は丸く…と考えていたのですが…。もしかしたら高齢でもかなり高度な「四角」を維持できるのかもしれません。

この動画で黐手を実演されている方は、ブルース・リーの師匠として有名なイップマン(葉問)宗師の長兄にあたるイップチュン(葉準)老師です。94歳にしてまだ、「四角」く相手を押しているように見えるのは気のせいでしょうか…。三角も四角も、さらに無限に細かい段階があるのでしょう。

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