ブルース・リー没後50年 WBLC 2023 「ドラゴン危機一発」

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1983年リバイバル版「ドラゴン危機一発」

ブルース・リーが1973年7月20日に亡くなってから50年。巷では各種イベントが執り行われ、WBLC World Bruce Lee Classic 2023で主演映画も再公開されました。

WBLC 2023では、私は7/22に「ドラゴン危機一発」を、7/24に「ドラゴンへの道」と「ドラゴン怒りの鉄拳」の2本を鑑賞。

まずは「ドラゴン危機一発」。

私が初めてブルース・リー映画を劇場鑑賞したのは1983年のリバイバル版でした。「ドラゴン怒りの鉄拳」との2本立てで

「南無阿弥陀仏の暇もない」

「脳が沸騰してしまう」

のキャッチフレーズとともに、音楽を一部入れ替えて公開されたものでした。このときに、彼の香港凱旋第一作である「ドラゴン危機一発」の彼のフレッシュな魅力と、まだ武術的要素を残したアクションに惹かれたことをきっかけに、今でもこの映画が私にとってはNo.1の存在となっています。

WBLC 2023はこの83年リバイバル版の音楽を復刻した「ドラゴン危機一発」が上映されるという話でしたので、これはもう見逃すわけにはいかない! ということでワクワクしつつ上映を待ちました。そしていよいよ上映開始。

しかしながら、その冒頭で「あれっ」て首をかしげることになってしまいました。いきなり北京語歌唱版のメインテーマが流れ出したからです。83年のリバイバル時は普通にインストゥルメンタル版だったはず。実際、この映画を見た高校3年生のときはしばらくこのオープニング音楽が頭の中でリフレインして離れず、困ったくらいですから。

それはさておき、音がめちゃくちゃ悪い。今回は英語音声なんですけど、ピーター・トーマスの音楽を採用した純粋な英語版とも異なっていて、どうも北京語版(?)に無理矢理ピーター・トーマスの音楽を重ねたり、日本独自の音楽を重ねたりしたんですかね? バックミュージックが複数重なって非常に聞き苦しいものになっていました。また、74年頃に出ていたサントラ盤もそうでしたが、音が割れ気味だし、上映中もずっと耳障りだと感じました。「ドラゴン危機一発」って、画質が凄くよくて、本当にブルース・リーがまだ生きているのかというような錯覚を起こすくらいなんですが、残念なことに音の悪さが足を引っ張っていて残念でたまらない。

ただ、83年版の音楽が流れる、シューたちが社長宅に乗り込むシーン、ラストでチェン(ブルース)が社長宅の最後の闘いに挑むシーンは音も悪くなく非常に懐かしかった!

ラストシーンの北京語歌唱。これについては83年版は記憶にないのですが、本当のところどうだったんだろう? 終始音が気になってあまり映画に集中できなかったんですが、彼の没後50年に周りの数十人の観客と同じ空間を共有できたことが嬉しかった。

80年代にPONYでVHS/LD化されたものは広東語版で音もよく、以降私はこの映画を自宅では広東語版で楽しんでいます。ただ、他の映画から抜き出した怪鳥音が当てられていることについては少し残念だったりもしますけど。

世界の映画アクションシーンを変えた瞬間-リバース・フック・キック

この映画では、初めてブルース・リーが自分の本格的なアクションを解放するシーンが私にとっての最高の見所です。製氷工場での乱闘シーンは、以後の世界のアクションシーンを変えた貴重な瞬間。ここでいきなり放たれる掛け蹴り(リバース・フック・キック)。83年、鹿児島の映画館で初めてこれを見たときの衝撃を今でも鮮明に覚えています。この蹴りいいな、と試合やスパーリングで採り入れていくうち、当時の私の最も得意な技になりました。

しかしながら、その後の1986年頃、フルコンタクト空手団体の全日本選手とスパーリングしたときにこの技を何度も仕掛けたのですが、簡単に外されたりブロックされたりして、全く通用しないことが分かってしまいました。それどころか、相手はローキックからそのまま掛け蹴りして、掛けて曲がった膝を伸ばす形での回し蹴りを一連の動作にして返してくるではありませんか。結果、最後の回し蹴りは頭部に受けてしまい、すっかり自信をなくしてしまったことを思い出します。

せっかくなのでこの足を一度も下ろさずに行う3連の技を彼に習って、私も何とか使えるようになりました。残念ながら、その後は詠春拳を習うことになり、それまでせっかく覚えた足技を使う機会は少なくなってしまいましたけど。

映画用のサイドキック

あと、最後の社長との激闘の冒頭部も凄く興味深いアクションシーンです。ブルース・リーは構えた状態からいきなりノーモーション/ノンテレグラフィックでサイドキックを放ちますが、これがめちゃくちゃ速くて、また気付きにくい。気付いた瞬間にはブルース・リーの足が相手に届いている、という感じでしょうか? 映画用にいきなり上段を蹴っていますが、これが下腹部や脇腹を狙ったものだったらどうでしょう? 避けるの難しいんじゃないかな?

ブルース・リーの飛び込み横蹴りについては、その実戦性について疑う人が多いことも確かです。過去に南郷継正師範がその著書で「燃えよドラゴン」のブルース・リーの飛び込み横蹴りの技を分析して、「こんな技は使えない」とか、「ブルース・リーの空手の実力は初段にも満たない」とかおっしゃっていました。さらには、弟子にも「燃えよドラゴン」を見に行かせ、ネガティブなレポートを書かせてそれを著書に引用していらっしゃいましたね。

しかし、これらの記述には大いなる疑問があります。南郷先生と門下生が詳細に分析した「燃えよドラゴン」の「飛び込み横蹴り」は「映画」用に視覚効果を高めた「プッシュ」的な技に見えました。その映画用に誇張された技の一つ一つをわざわざ引っ張り出して細かく分析し、それが全てとばかりにブルース・リーの技量を測るなんて、危険なことではありませんかね? この部分を何度読んでも、とても「弁証法」を用いて「空手の上達」や「修行」の方法を解き明かした先生の分析とはとても思えません。

実際、近年になって動画共有SNSが成長して、ブルース・リーのさまざまな姿を誰でも見られるようになりました。こと、スパーリングに関しては、彼の動きは映画とは全く異なるものであったことが明らかになり、南郷先生、門下生の分析はまったく意味のないものになってしまいました。たらればの話で恐縮ですが、南郷先生や門下生が映画で得た知見を元にブルース・リーと立ち会っていたら、それは危険な目に遭っていた可能性が大です。

当時は突き蹴り中心の格闘術の話題をブルース・リーがさらっているような状況でしたし、日本の空手家として様態の異なる他国の武術ばかりが注目され話題になるのが悔しかったのかもしれず、映画と対比させる形でご自身が修行されている空手の優れている点を強調したかったのかもしれません。

ちょうどいいタイミングで石井東吾先生がブルース・リーのサイドキックについて、映画用と截拳道の用法の違いを解説してくださってました。

映画用のキックついては私は少しだけ解釈が違う部分はありますけど、映画とリアルでは違うのは当然かと思っています。

石井先生の「映画用」デモンストレーションは、フィニッシュのフォームを見る限りではブルース・リーのドラゴンへの道燃えよドラゴンで見せる踏み込みサイドキックに似せたものだと思われますが、かなり浅いですね。先生の軸足とお弟子さんの前足の位置に着目してみてください。その上で、ブルース・リーのサイドキックをスローで見ると、軸足が相手の前足のすぐ前まで踏み込まれているのが良く分かると思います。

下記ページのバナーを参考にしてみてください。

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ちなみに、スパーリングで見せるストッピングのサイドキックは写真は小さいですが下記ページで見られます。

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以前、「秘伝」誌だったかな? 高岡英夫先生が「燃えよドラゴン」のサイドキックを分析されていましたが、これに関してはブルース・リーがヒップやハムストリングスを効率良く使っているというようなことを述べていたと思われ、正確な分析であるように感じました。今、手元にこの資料がなく、どこに掲載されていたかもハッキリ記憶していないので、ご存じの方がいらしたら教えてください。

…実はこの踏み込みキック、詠春拳の先生にも習ったんですよね…。技術書であるBruce Lee’s Fighting Methodでもかなり飛び込んで後ろ蹴り気味に蹴っていますが、写真で見ても相当威力がありそうです。

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私個人は、必ずしもブルース・リーのサイドキックを映画用/実戦用に正確に分類するのは難しいと思います。先に挙げた、ノンテレグラフィックのサイドキックは明らかに、石井先生のおっしゃる「映画用」のフォームとも異なりますし、映画の中で飛び込みサイドキックを使っているシーンもむしろ少なく、上半身を起こしたスタイルできれいにストッピングしたり連打したりしているほうが多いですね。でも、相手にダメージを与えないように計算しているところだけを取れば、映画に登場している彼の蹴りは全て映画用とも言えますし…。

さらに、南郷先生の下りで主張したことと矛盾を感じるかもしれませんが、私の経験からいえば体重が同程度であれば踏み込みサイドキックも凄く有効で、必ずしも映画専用とは言えないところもあると思います。

いや、それにしても52年も前のブルース・リーの映画を技術的なネタにできるというのは、本当にありがたいことですね。

またこういう企画はぜひやっていただきたいと思う次第です。

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