鍛錬した範囲を守る

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動画に示唆を受ける

比較的最近まで、商業格闘技を除いて他の武術の専門家の動画を積極的に見ることは多くはありませんでした。今回紹介する動画内にも埋め込まれている、石井先生が宮平先生の知るきっかけになった映像は、当時私も見て「すごい」と感じたのを覚えていますが、その後も私自身はずっと独自路線で、あまり他の人のことは気にすることなく勝手に練習していました。

でも、自分やごく親しい人たちだけの間で活動するだけではどうしても限界は見えてきます。ピンキリとは言え、せっかくYouTubeもコンテンツが揃ってきたこともあって、ここ2〜3年は他の人の動画も結構積極的に拝見させていただくようになりました。

さて、今日紹介させていただくのは、最近の中で特に印象に残ったものです。自分が今練習しているものが「意味があるもの」として裏付けられた根拠が示されたような気がして嬉しく、また、大きなモチベーションにつながったからです。もちろん、全然レベルが違う世界での話であることは重々承知していますが、武術を練習している多くの方々へのひとつの指針が示された貴重な対談をしていただき、それを公開していただいたことに感謝いたします。(もちろん、DVDも買いたいと思います!)

私が感銘を受けた部分からスタートするように設定していますので、初めから見たい人はご注意ください。

この動画の中で、石井先生が宮平先生に怪我の経験を尋ねられたことに対して回答するところで、

「站椿を体に染みこませていると、それから外れた動きというのは、怖くてできない」

「物理的な形だけじゃなくて感覚もそうだと思うんですけど、これから外れた(動き)っていうのは、自分の中ではちょっと拒絶感というのがあって」

とおっしゃっているんですね。

そうです。私自身は頭の中では分かっていたつもりでしたが、私も「基本的な動きを体に染みこませ」「大きく外れた動きをせずに技を行える」ようにしていたのです。この動画で宮平先生がおっしゃった言葉を伺ったとき、私が現在練っている感覚が「ぶわっ」と私に重なるように思い起こされ、私が今半分盲目的に毎日練習しているのはこれを実現するためだったんだな、と再認識した次第です。

経験ともリンクしていた

昔、詠春拳を練習し始めた頃、横掌での寸勁を強く行いすぎたことで右肘を痛め、しばらく伸ばせなくなったことがありました。実は今でもやり方を失敗すれば痛みが発生することがあり、数年前にコンスタントな小念頭練習を再開したときにもその扱いに頭を悩ませたものです。

しかし、この数年の間、特にこの1年と少しの間は1日も欠かさず小念頭を続けてきたなかで、偶発的な痛みの発生がほとんど起こらなくなってきていることに気づきました。わざと動きを変えると痛みや違和感があることを考えれば、おそらくは完治したわけではなく、正しい動きがかなり染みこんできたおかげで体が不正な動きを許さなくなってきているのだと思います。これも宮平先生の言葉で気づき、裏が取れたような気がしました。

また、褒められたことではないですが、2-3年前に何回か路上で一触即発なシチュエーションに陥ったことがあります。若い頃はこういう場だと緊張もあったのに、その際は最初から「制空権を制したような」自信があり、何が起こっても対応できるという感じがしたもので、余裕がありました。今思えばこれも、詠春拳の小念頭やその他の基礎鍛錬で染みこませた感覚によるものかな、と思っています。ただし、修行が少し進んだ今であれば、基本的にはその段階には至ることはなく、遠くから避けたり、危険を察したら鍛えた「逃げ足」を使うでしょう。

私の練習は趣味の範囲でしかやらないものですし、誰かに勝とうという意識もない、実に緩いものです。それでも、習慣的に続けるということでいろいろなところに効果が波及してくるものだと改めて感じました。

詠春拳の「範囲」

せっかくですので、詠春拳で染みこませられる範囲について述べてみます。

詠春拳の制空範囲

これは習っていた当時のメモですが、タイトルでは防御範囲となっていますけれども、上半身に関しては攻防全般をこの範囲内で行うことを基本にします。実際には胴体が回転するし多少は上下するしで、範囲は広がって見えることでしょう。

この図が示すように、肩の高さに伸ばした両手の指先を付けると、上から三角形に見えることがわかります。これを正面から見たときに円錐を描いた範囲が詠春拳の基本的な攻防範囲となります。

ただ、前にも書いたように、適用する相手が詠春拳以外の場合にはこの範囲を若干広げなければならない場合もあります。例えば、体を傾けながら打ってくるフック系(ショートフックやスイング)は、型どおりの動きでは完全に防げないことがあるからです。私の先生もそこを認識していて、普段の練習より少し肘の角度を狭くし、この円錐の範囲より少し外側に手を出すテクニックを習ったことがあります。それでも、その動きは宮平先生がおっしゃるような「外れた動き」にはなっていない実感がありました。練習の成果を活かすためには、「大きく外れた動きにならない」、その感覚を守ることは重要なんだと思います。

詠春拳や武術に限った話ではない

今回は、武術の基本的な動きを体に染みこませることに関するお話でしたが、これは何も詠春拳や武術に限った話ではないと思います。他のスポーツでも、みなさん基本をしっかりやりこんで身につけ自分自身の中で必要な形に展開させています。私は子供の頃から運動神経が鈍くて、こういう部分が分かってくるまでにものすごく時間を要しました。反面、今になっても面白がって、いろんなフォームを研究したり、考え方を身につけたり、また完成度を高めようと努力を続けることができているのかも。

私が現在、武術と同程度に楽しんでいる趣味に、マウンテンバイクがあります。当初は転んだり、何度も怪我や骨折を繰り返していましたが、今はそういうことも少なくなりました。同じ場所や速度域では以前感じていたような怖さもありません。以前のスキルなら怪我してもおかしくないような場所を普通に通過できるようになっています。昔の映像を見るとふらふらしていたものが、最近では軸が決まって安定してきているように見えるので、これも守るべき体の動きをある程度維持できるようになってきている兆しでしょう。

毎日の地道な練習は本当に重要ですね。今後もそれぞれ、自分を高めていきたいと考える今日この頃です。

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