ムチミとは

ガマクチンクチという用語について、これまで習ってきた内容を紹介してきましたが、これらとセットでよく聞く言葉に「ムチミ」という言葉があります。

いずれも沖縄の舞踊と共通する用語らしいのですが、この「ムチミ」についてだけは高校3年間の練習で出てきた記憶が曖昧です。言葉自体は知っており、その発音から「鞭身」のイメージを漠然と持っていたことは確かです。空手の場合は腰を先に切って正拳や手刀などの武器が到達するころには腰が逆越しに戻り、まるで鞭を振るような動きになっているところからのイメージでした。

少林寺流空手道練心舘の今井師範が紹介されているこのイメージですね。

こちらは、首里手の達人、仲宗根師範の紹介するチンクチとムチミ。チンクチとムチミを明確に分けていて、チンクチでは骨(の整列)、ムチミでは関節のしなやかな動きを使って力を運用する表現をされています。今の私では仲宗根師範が示すムチミについては細かく説明できませんけれども、沖縄空手の「首里手」系のムチミとは先の今井師範の動きも含め、関節をしなやかに連動させて力を使うようなことを指している印象を持ちました。

この動画でもう一つ興味深かったのは仲宗根師範が「チンクチ」の説明で示された力の発生源を示す「位置」についてです。その位置は詠春拳の先生が示されたものと同一でした。実際、中曽根師範の動きは本土の空手の大会で見るような動きとは異なり、私が見慣れた中国武術の動きのほうにより近いように思えました。

さて、次は私が高校時代に習った「那覇手」系に属する剛柔流空手道のムチミについて。

今、使える! 術技修得システム 宮城長順の沖縄空手に空手を学ぶ」で調べてみるとムチミについては「餅味」と書かれていました。沖縄語が三母音ということで、ムチミという発音になるとのことです。鞭身と餅味ではその漢字の表記からはずいぶん意味が違ってきそうな気がしますね。

こちらは剛柔流空手道の東恩納盛男師範が説明されているムチミ。

剛柔流の型(フォーム)の修行段階には2段階あるそうで、最初の段階ではやってきたものをガチッと捉えて、ガチッと返すような動きになることを示されています。しかし、修行が進んでムチミが分かると相手の先手を取ってやわらかく「くっつく」ような動きになるのだといいます。

なるほど。私が高校3年間の剛柔流空手道の修行でムチミについての記憶が曖昧だったのはそういうことか。私たちがやっていた練習は東恩納師範がおっしゃる、第一段階までの動きだったのです。第二段階で具体的になるムチミのことが、当時の私たちに分かるはずがありません。

その第一段階の動きについては当初から違和感があり、「なんだ、結局組手には使えないじゃないか」と短絡的な見方をするようになって、それが空手への興味を失う原因になってしまいます。そういうことがあって詠春拳にも出会えたわけなので、それはそれで間違いではなかったと思います。実際にそのおかげで、詠春拳の修行の初期の段階からそれらしいことに触れていく機会を得たわけですから。

この剛柔流のムチミは、特に私が後に習った「接触を大切にする」詠春拳につながる部分がありそうで興味深いところです。詠春拳の手を接触させて攻防の練習をする「黐手」の黐(もち)の字と剛柔流空手道の「餅味」の餅(もち)。沖縄の空手と、そこに影響を与えた中国武術の共通点を探してみるのも楽しい作業です。

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