上腕の力を抜く練習

直拳力抜き練習
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肘の屈伸

30年以上前の話になりますが、詠春拳の実技を習い始めたまさにその日に習った方法です。

当時の私のメモを見ると、少なくとも2箇所にこの練習法の記述がありました。

まずは初日。突きの方法そのものの第一段階の練習法としてメモされていました。その後、少し経ってそれが単なる「上腕の力を抜く練習」だったことを兄弟子より知らされます。例の、「先生が内容を隠して教えて、兄弟子が本当の意味を教えてくれた」パターンです。

この練習は、上腕の力を抜くには有効な方法だと思いますが、私のように誤解をしたまま練習すると逆に害があるともいえます。実際、私はこの練習から得た感覚で強い空の掌打を打ったことがあり、その際に右肘を激しく痛めてしまいました。それは30年を経た現在も後遺症が残っており、右の突きにはかなり気を遣う必要があるくらいです。

動作としては単純で、

  • 拳を軽く握り
  • 上腕の力をできる限り抜いて
  • 素早い肘の曲げ伸ばしを
  • 繰り返し行う

だけです。コツとしては、

  • 実際の突きではないので、拳が正中線を守る必要はなく
  • 肘はかなり開き気味でもいい
  • また、拳を一直線に出す、というような軌道を守る必要もない

というものでした。先生に始めに習ったときは、このコツの説明がなく、私はこれが詠春拳の突きそのものの練習だと解釈していたわけです。ただし、

  • 肘が伸びたときに「拳が肘より下に行かないように注意すること」

については、念押しがありました。私はこの単なる練習用の動きを掌打として、反射的に用いてしまったので、問題の右肘の怪我を負ってしまったわけです。先生も先輩も念押ししたということは、彼らにも肘を痛めた経験があるのかもしれません。

最初に紹介した図だと、肘を動かさずに伸縮をしているように見えますが、この図の通り行うと「拳が肘の下」まで伸びすぎる「過伸展」を起こす可能性が高くなります。なので、肘を伸ばすと同時に、一緒に肘を前に出すようにする必要があります。

実際にはこの図のイメージに近いでしょう。実は1枚目のイメージが先輩から教えていただいた際に記録したもので、この2枚目が先生から習った初日に記載した者です。

この初日のメモのほうには「正面から見て拳を正中線上においたまま行う」ように書かれており、先生からそう伝えられたものだと思います。また、さらにはこの動きに先日記述した「栓抜き」動作を行うようにも記されていました。基礎知識のない者がこのような説明を受けてしまうと、単なる力抜きの練習を突きそのものと勘違いしても仕方がないかな、と思います。

今でもいろいろな団体で、このように肘を中心に拳が連続して弧を描く直拳のフォームが指導されています。確かに速くは打てますが…。私が所属した団体でも、練習経験の浅い入門生には本当のことを隠すため、「弧」のイメージを植え付ける目的でこのような教え方をしたのかもしれません。

もし、私と同じような体験をされている方は、この突きの動きについてはぜひ疑ってみてください。まずは、ご自身のカラダを守るためです。

肘からなる「音」

この練習を始めると、肘からパキパキと音が鳴り始めます。それが、上腕の力が抜けてきたことを示すひとつの目安だったりします。

これは以前紹介した「秘伝必殺 鉄砂掌」という書籍に「自然勁」を得たことによるものだ、という記載があったと記憶しています。「勁」については、また項を改めて記事化する予定です。

ただ、先生や兄弟子の行う突きは、肘などの関節の音は鳴るけれども、突きの打ち方が私とは違う上、音も微妙に異なる気がしていました。「秘伝必殺 鉄砂掌」にも、「初級者と上級者では音が違う」という記載があったと思います。確かに、今では私の肘の音もパキパキというより、グジュグジュ湿った感じの音に変わって来ています。

今回は記事を起こすにあたり、久々にこの練習法を体験してみたのですけれど、腕の力を抜ききった感じがかなり新鮮な印象です。最近はいわゆる「力」を抜く代わりに別の「力」を加える練習をすることも多いので、その「力」イメージが間違ったものに置き換わったりしないよう、たまにこの練習を行うことは有効かもしれないと思いました。

今でも小念頭は毎日のように時間をかけて練習していますが、こういう部分的な基礎練習も加えて、違った形でのリセットも試みてみようと考えています。

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