清水希容選手おめでとうございます

虎拳

私が空手競技をしていたのは40年近く前の高校時代の話です。いよいよその空手競技がオリンピック競技として日本で行われることになったということで、懐かしくなって何戦か観戦することにしました。

まずは組手。私たちの時代(1980年代前半)は突きでも蹴りでも、技が相手に決まれば一本で、先に三本を取ったほうが勝利、というルールでした。それに当時のルールでは、上段蹴りでポイントを取れることはほとんどなかったと記憶しています。胴体への前蹴りすら取ってもらえることは少なくて、そのあとに突きを決められてポイントを取られるということも多々ありましたね。

今日の組手を見ていると、上段への蹴りや相手が倒れた瞬間の突きは3ポイント、中段への蹴りは2ポイント、突きは上段、中段にかかわらず1ポイントと複雑になっています。3ポイントが「一本」で、2ポイントが「技あり」、1ポイントが「有効」であり、私たちが40年前に決めていた突きは「有効」に過ぎない扱いになっていたんですね。

昔ながらの「空手は一撃必殺」「だから寸止め」という思想からはずいぶん変化したということでしょうか。なぜなら今のルールは、立ち技での突きは基本的に一撃必殺ではないというということを示しているからです。今では実際に打ち合う直接打撃席の格闘技が人気になり、特に実力伯仲のケースでは多くの場合、まず一撃で人を倒すことは難しいことが分かってきていますよね? こういう面から、「現実を知った」伝統空手の今のルールは潔いのかもしれません。

現在のルールを採用した結果、私たちの時代の空手の試合よりはるかに一般受けするようになっていると思います。隙あらば、あるいは逆転のために一本を狙うことが多くなるため、動きも派手になり、決めるための動作もより高度になっているように見えます。私は蹴り技が得意でしたので、私の時代にこのルールがあったらなあ、と羨ましく思ったりもしました。

ただ、一般人にはその勝敗が非常に分かりにくい点というは変わっていないなあ、と思いました。久しぶりの観戦の割にはだいたい分かりましたけど、速すぎて一般の人には何が起こったのか分からないのじゃないでしょうか? その点でVAR判定はなかなかいいな、と思いましたけれども、審判団の確認のためやVAR判定のために試合がいちいち止まるのでは、気が削がれやすくなります。

相手の前でコントロールして強打はしない、というルールだとフェンシング(テコンドーも?)のように接触の強さで機械判定でポイントが入る方がより公平で正確な判定ができるようになると思いますね。顔面へのピンポイント攻撃をどう判定するかで危険性が高くなるのかな。絶対に接触が必要になるためです。

また、一本と有効の話に戻りますが、武術的な側面からは絶対に効くはずがない軽くなでる程度の上段へのかけ蹴りが、上段にまともに決まる突きよりポイントが高い「一本」になるとか、画一的に設定されているのが、今の私からすると疑問点や不可解な点もあります。キックボクシングのようなフルコンタクト競技で、かけ蹴りでKOされるケースなどはほとんど見かけないですが、カウンターパンチで試合が終わるケースは多々ありますよね? こういった点で今の空手ルールは私にはリアルさを感じられないのですけれども、ポイントを明確にするにはしかたがないのかな…? それでも、総じて技のレベルがとても高度で、私の場合は数十年間観戦するとしても「フルコン」だけだったのが、今回の組手ルールも今後は見ていきたいと思うようになりました。

あとは、形も久々に何組か拝見しました。スーパーリンペイは高校時代に師範や館長先生が見せてくださったものと大きく異なり、多分に競技的でした。今は競技ポイント30%なんてルールもあるんですね。より動作を分かりやすくするために腰をきる動作や体を波打たせる動作が大きくなっている気がします。おそらく道着をこする音なども重要になってくるんじゃないでしょうか? いずれにしても、この競技の難易度は高く見えます。

女子形は決勝戦をライブで見ました。チャタンヤラクーサンクーという形による清水希容選手とサンドラ・サンチェス選手の試合で、解説がいうようにサンドラ選手の力強さ、清水希容選手のしなやかさの勝負であるかに見えました。身内びいきかもしれませんが、緩急としなやかさの面で私は清水選手が上回ったかと思いました。

結果は銀メダルということでしたが、選手層が厚くなった空手の世界、かつ初めてのオリンピックで銀メダルという成績を残せたことは素晴らしいことだと思います。おめでとうございます。

私たちの時代の競技で「チャタンヤラ(北谷屋良)」など、クーサンクーに分類があったかな? 当時は単に「クーシャンクー」とか「公相君」とか呼んでいたような気がしますね。私は剛柔流だったのでこれらには縁がありませんでしたが、見栄えでは剛柔流の形は地味になってしまうので、不利だなあ、と思ったりすることもありました。

今日はたまたま、COVID-19の2回目のワクチン接種で副反応が強く出た影響で仕事を休んだことでLIVE観戦が可能でした。明日も休憩時間をずらしたりして観戦したいところです。今日のように形の決勝戦が業後の時間帯だといいのですが。

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