防具組手

3年生になってからだったと思いますが、町道場で練習していたある日、空手競技用の防具を師範が借りてきたことがありました。

全日本空手道連盟系の試合だと、今では寸止めのポイントルールしか知られていませんが、私の高校時代には「防具組手」がありました。決め手は寸止めポイントルールと似た感じでしたが、違うのは顔面であろうと胴体であろうと、実際に「強打」する、ということです。

ネットで探してみると、防具付空手道の試合は今でもあるんですね。寸止めのポイント制と比べて、強打はあるものの、いいのがひとつ決まればそこで止められ、一本を宣告される判定の仕方は寸止めのポイント制と似た感じがします。

私が空手道部にいた1980年代前半は、顔面の防具が鉄柵入りでしたが、剣道のものとは異なり、その隙間が大きいものでした。それ以外は、ルールも組手スタイルも変わっていないように見えます。ただし、私の現役時代は蹴りを駆使する選手は少なかったような印象があります。

ブルース・リーの「ソウルファイティング 魂の武器」を読んで以来、防具の上から思いきり殴る、蹴る(あるいは殴られる、蹴られる)ことについては、すごく興味がありました。体の大きい弟を使って、グローブのみ着用しての殴り合いはしていましたけど、兄弟なのでお互いに「強打」なんてできません。

このときは、私より身長が高い同級生、体重が重い同級生らと防具で実際に強打してみたらどうなるんだろうとワクワクしながら防具を付け、さっそく何人かと組手をしてみました。

当時の私は蹴りが得意だったこともあって、普段の寸止めルールでは使わない上段回し蹴り、後ろ回し蹴り、飛び後ろ蹴りなどを使って、体重差が20kg近くある同級生を町道場の隅まで追い詰めました。これはいけるぞ、と思ったのもつかの間、油断をしたときに顔面にカウンターの強烈な正拳突きを喰らいました。防具を付けていることもあり、効く、というほどではなかったのですが、防具ルールも結局はポイント制なので、ここまできれいに決まると「一本」です。

普段、寸止めで顔面防御の練習もしていなかったわけですが、ここを改善していけば以後、個人戦は防具付きに行けるのではないかという手応えがありました。「ソウルファイティング 魂の武器」の記述の影響で、寸止めルールに矛盾を感じながら大会に出ていたこともありますが、実際に当てる防具付きはその悩みを解消できるかもしれない大きなチャンスだと思いました。

私が訴えるまでもなく、師範から「意外な光景だった。おまえは次回から防具付きだな」と言ってもらえたこと、それについてものすごく喜んでいたことを記憶しています。

ですが…。残念ながら私が防具付き組手の個人戦に参加することは結局ありませんでした。いろいろと事情はあったのだと思いますが…。団体戦での全国大会を目指していたこともありますし、1人だけ違う練習をさせることは難しかったでしょう。また、私が防具付き組手に移行したとしても、1年生から練習しているような猛者相手に、3年生から始めるのでは「遅すぎる」という判断があったのかなあ、と今となっては思います。

これは本当に残念なことでした。

防具組手といえば、最近ブルース・リーの防具組手映像が公開されました。スパーリングというよりは、デモンストレーションですが、映画の中とは違う、ブルース・リーの武術を垣間見ることができます。

動画の後半に2つの組手が収録されていますが、防具の上から一撃で効かしているところがすごいな、と思います。相手の攻撃に対するタイミングが非常にいいですね。ただ、お二人の弟子は全力でブルース・リーに襲いかかっていますが、ブルース・リーはさほど本気では対応していません。

それでも、一人目の相手に対しては特に強いカウンターを入れていたり、ひっくり返したりしていて、普段ブルース・リーの道場でどれだけ激しい組手練習が行われていたのか、想像することができると思います。

それに対して、二人目に対しては力を抜いて、やさしく対応しているのが分かります。この動画は途中で切られていますが、最後のシーンの直後にブルース・リーの力をコントロールしたハイキックが二人目の相手の顔面を捉えます。なぜ、このシーンをカットしたのかは不明ですが、Bruce Leeの公式アカウントで公開されたバージョンでもカットされていたので、あえてそうしているのだと思われます。

一人目はおそらく若い人で、二人目はかなり年長のお弟子さんを相手にしていて、このようなデモンストレーションになっていると私は考えますが、顔をハッキリ確認できません。動画を出している人たちは、一人目がテッド・ウォン師夫と言ったり、ダン・イノサント師夫と言ったりしているようです。二人目はターキー木村師夫という人が多いようにも感じられます。

このときのフルコンタクト・スパーリングの相手について、日本のIUMAのサイトには、ジェームス・リー師夫とターキー木村師夫と書かれています。

http://www.bruceleejkd.com/aboutjkd/blbio3

お二人ともブルース・リーよりかなり年長の方なので、一人目がこのお二人のいずれか、とは考えにくいと思います。同じ大会で、ターキー木村師夫は、ブルース・リーの目隠しでの詠春拳式スパーリング(黐手)を担当されているので、そちらのことを言っているのかもしれません。

ジェームズ・リー師夫については、この大会で防具を付けている写真を見たことがある気がするのですが、一瞬、二人目の方がマスクをしないで出て来られるシーンを確認すると、私にはこの方がジェームズ・リー師夫のように見えます。一人目の方は、顔が見えないのでなんとも言えないのですけど、髪型や動きから、ダン・イノサント師夫ではないでしょうか。

この動画によれば、やはり一人目の方はイノサント師夫のようです。

Rare pic of #BruceLee & #JamesYimmLee in 1967 Sparring Demonstration #jeetkunedo #jkd #martialarts #gungfu cred: @Kazunori_Ito pic.twitter.com/sTEmIZAd56— Fist Of Interception Institute (@INTERCEPTION_01) 2017年6月25日

この記事が正しければ、二人目はジェームズ・リー師夫ということになります。