空手鍛錬三ヶ月の技術解説

空手鍛錬三ヶ月

ワクワクした気分で始めた中国武術の通信教育でしたが、何も上手くなっている、強くなっている実感がない…。とはいえ、いまさら別のものを習いたいとも言えません。

実は、当時はブルース・リーの写真を使った「キック&マーシャルアーツ」という他社の通信講座もあって、一度資料取り寄せをしたことがあったのです。当時は肖像権や商標の規制も緩かったのか、ブルース・リーや彼に似たキャラクターはあちこちで使われていた記憶があります。

ここで資料を取り寄せたときは、パンフレット以外に丁寧な手書きの手紙が添えられていました。有名なキックボクシングジムオーナーが、「勇気を出してパンフレットを取り寄せたであろう少年」に思いを馳せる内容で、これには非常に心を動かされました。しかし、私は結局中国武術のほうを選んでしまったわけです。今でもそういうところはありますが、私はこういった基本的な選択ミスがが多い子供で、このときの選択についてはあとあと、強い後悔があったのを覚えていますよ。

時が経過し成人後に「キック&マーシャルアーツ」講座のテキストを入手する機会がありました。それは中国武術のテキストとは異なり、「シンプル」で「分かりやすい」構成になっていました。

通信教育というのは薄いムックのようなテキストであることは定番なのか、もうちょっと情報量が欲しい気はしましたけど、私が中学生の当時はキックボクシングの書籍自体がほぼ存在していないことを考えると稀少な存在だったでしょう。これについても、いつかコレクションのひとつとして紹介したいと思います。

中国武術のテキスト練習に嫌気が差していたとき、町の本屋で1冊の本を見つけました。「強健な身体を得る90日間 完全図解 空手鍛錬三ヶ月 四肢五体の武器化 …拳(こぶし)が拳(けん)に変わるまで!」という単行本です。

空手鍛錬三ヶ月
空手鍛錬三ヶ月

玄制流空手道の創始者、祝嶺制献先生の書籍です。購入日付を記録していないので分からないのですが、1979年に刊行された書籍ですので、1979年〜1980年頃、中学校2〜3年の時に買っているはずです。

躰道に関する記述
躰道に関する記述

祝嶺先生は「躰道」の創始者としても有名でいらっしゃいます。「空手鍛錬三ヶ月」には「躰道」についてもわずかながら触れられていますが、母胎となった「空手」との対比について記述されており、当時中学生の私も「躰道」にかなり興味を持ったのを覚えています。

躰道 予告編

こちらは私が管理する動画チャンネル、exfit TVで公開している躰道の動画です。

空手鍛錬三ヶ月の技術解説
空手鍛錬三ヶ月の技術解説

なんか「自分にもできそう」な気がして、思わずこの書籍をお小遣いで買ってしまったのでした。

「空手鍛錬三ヶ月」の技術解説は、現代の入門書からするとずいぶんと図解が雑だったりします。後にこのことが私には災いするんですけど、イラストは「開始点」と「終了点」しかなく、「中間動作」がありません。私の場合はこの「中間動作」が狂ってしまったんです。

ただ、文書は分かりやすくて、頭の中にイメージが勝手に再現されるような解説は魅力的でした。問題は、中学生の頭の中に再現されたそれが、必ずしも正しくなかったことですね。

ともかく、突き、蹴りを一人前にしようと、カリキュラムの中の私にもできそうなものをピックアップして、練習し始めました。

記憶では、特に拳を鍛えることに執着していたように思います。そのために、「巻藁(まきわら)」と呼ばれる鍛錬具を用意する必要がありました。これは、しなりのある木材を地面に立てたもので、肩の高さほどあります。この柱の上部に縄で藁を巻き付け、ここを拳や手刀で叩いて、鍛えるのです。

ただ、当時の私の財力ではこの木材を入手することができず、しかたなく近所の竹林から「竹」を刈って来て、多数束ねてしなりのある巻藁を作りました。今思えばちょっと「しなりすぎ」ですが。

最初は拳の皮膚が破れ、巻藁が血まみれになったりしましたけど、それでも人間の体は適応していくもので、拳の部分が「タコ」になってそういうこともなくなりました。そういえば、父もこの巻藁を使っていたことを覚えています。同じように皮膚が破れていました(藁)。

思えば、空手に興味を持った最初のきっかけは父でした。

幼少の頃、私たち家族は母方の祖母の実家のとなりに家を借りていました。両親共働きだったので、私は多くの時間を祖母の実家で過ごしたのですが、この祖母の実家が五右衛門風呂だったので、お風呂を沸かすときには、乾かした板を使う必要がありました。この板が大量に積んであったのですが、父がこの板を小さくするのに、次々と手刀で割ってしまうのです。記憶では、左手に板を載せて、その上に手刀を振り下ろし、上下で挟み込むように割っていました。あまりに見事なので、未就学児の私はそれが何なのか、父にそれは何かと尋ねたことがありました。

「これはね、空手というんだよ」

そのほかに何を言っていたかは忘れましたが、「ちょっとだけ習った」くらいの話をしていたのを記憶しています。後に、父の書棚でこんな本を見つけました。

空手入門
空手入門

遠山寛賢師範の「空手入門」です。

1968年刊
特に印象に残っているのが、右下の写真ですね
巻藁練習について
巻藁練習について。

私がこの書籍を目にして興味を持ったのは1980年頃だと思いますが、その当時でも文章がずいぶん昔風だ、と感じたものです。かなり神秘的な印象を受けました。後に、私自身もこの書籍のハードカバー版を買いました。

空手道入門
空手道入門に改題

こちらは1969年に発行されており、タイトルが「空手入門」から「空手道入門」に改題されています。合わせて、元文社は鶴書房に名前を変えています。鶴書房の書籍はいくつか蔵書していますが、1979年までしか存在していなかったというのは意外でした。それはちょうど、私がブルース・リーの衝撃を体験したころです。

高校で空手を習得したあと、祖母の実家を訪れた際に残っていた、薪になる板を割るチャレンジをした記憶があります。空手を本格的に3年間やったのだから、当然できると思っていたのですが…できませんでした。あの父の技は何だったんだろう。

父は不思議なところが多々ありました。一番印象に残っているのは親戚の家で集まって食事をしていたときのこと。父は窓際に背中を向けて床に座っていて、酔っ払って親戚たちと談笑していたのですが、その後ろをよちよち歩きのいとこが歩き、かかっていたカーテンに寄りかかりました。このときカーテンの奥の窓が開いていたため、いとこがそのまま庭に落ちそうになりました。その刹那、それまで笑っていた父親がいきなり後ろを向いて、今まさに落ちようとするいとこをキャッチしたのです。これには親戚一同、驚きましたが、何ごともなかったかのように話を続ける父親に、間近で見ていた私には本当に不思議な感じがしたものです。

父はこの文章を書いている今も健在で、習慣的に歩いたり走ったりしているみたいです。昨年もDNFになったものの、春先に2本のフルマラソンに出場していました。

話がそれました。

ひ弱だった私も、「空手鍛錬三ヶ月」の情報を元に巻藁を突き続けたことによって、中学時代にはいつの間にか、コンクリートの瓦まで割れるくらいに拳が強くなっていました。それもあって、この書籍に対する信頼は高まるばかりだったのですけど、この自己満足には落とし穴がありました。

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