いよいよ、1年半に渡る独りよがり練習も最終段階に来ました。通信教育や書籍で覚えたとしても、武道・武術・格闘技なら絶対に相手が必要です。私はこの問題をどのように解決していたのでしょう?
この独りよがり少年はかなりひどい「お兄さん」でした。2つ年下の弟を自分のスパーリングの相手にしていたのです。私にとって都合が良かったのは、弟が学年一の運動能力の持ち主であった、ということです。兄が学年最低、弟が学年最高って、神の気まぐれな采配なんですかね…。
当時160cmにも満たない身長の私に対して、弟は身長が高く、体重もかなり重かったので、いい練習相手になりました。友だちからボクシング・グローブを借りてきて、実際に殴り合う練習も行いました。中学1年生の弟は中学3年生の私と互角でした。彼は彼なりに、私にやられないようにいろいろと研究していたようです。中学3年生の最後のころに買ったこの本を彼も参考にしていたのです。
弟は部屋から出てこないなあ、と思って覗いてみると、こんなページを開いていました。
さらに右手に金槌をもち、自分の左の手の甲を金槌で叩いて鍛えていたのです。こりゃうかうかしていられないな、と私もやり始めましたが…。でもいつだったかな? 自分の拳にも自信があったころ、弟とスパーリングして熱くなってしまい、正拳を顔面に向けて放ってしまったことがありました。これを、彼は頭を下げて頭部で受けたのです。ひとこと「いてっ」と発したかと思うとすぐに反撃してきました。私は…というと見事に右の拳を破壊されてしまったのです。私の負けです。たぶん私がすでに高校の空手部に所属してあとのことだと思いますが、練習でしばらくの間右の拳を使うことができませんでした。
冒頭に紹介されている写真は、両足での正確な蹴りや、黒崎師範による衝撃的な急所攻撃の写真など、かなり刺激的な技術書です。同時に、大判の書籍で写真も大きくて美しく、優れた解説書でもありました。
さらには、女性モデルも登場するのですが、この書籍のいろいろなところに出てこられるこのおねえさんのファンになっていたのかもしれません。気がつくとこの人の写真ばかりを見ていました。初版が1967年ですから、このころ20代だとしても、今では70代後半から80代前半になっておられるはず。ちょっと想像ができない…。
さておき、分かりやすくて技をひとつ習得するとそれだけ強くなったように感じられるこの書籍は、高校1年のときの私のバイブルのような存在になりました。
無事に空手道部が存在する高校への進学が決まった後、沖永良部島に単身赴任に出ている父を家族で訪ねたときにも、この書籍を携えていたことを覚えています。これから空手道部で習えることに心を躍らせながら、待ちきれない私はこの書籍を見ながら「リハーサル」していたんですね。きっと。
ここで、私の1年半に渡るバーチャル修行もようやく終了の時を迎えます。
まあ、修行だけをやっていたわけではなくて…。ブルース・リーに近づくために体を鍛え、武道の自習を始めた以外に、通信教育でカンフー・ウェアを買ったり、友人から黄色いトラックスーツを買ったりして、格好も真似たりしていました。でも、あの黄色いスーツは、きっとブルース・リー先生にしか似合わないんだろうな〜ということはうすうすと…、いやハッキリと感じてしまいました。