通信教育を試す

オタッキーな子供には難解

13歳のときに遭遇した、ブルース・リー・ショック。真剣に彼のようになりたい、と思いました。形だけでも彼に近づくためにしなければならないこと。それはカラダづくりと、打撃系の武道を習得することでした。

まずは、近所に住む陸上部の友人から片方5kgのダンベルセットを借りてきて、ウエイト・トレーニングを開始するところから始めました。中学校3年生からはそれまで続けてきた学校の絵画クラブを辞め、マラソンクラブに所属することを決めました。ブルース・リーに関する書籍を読むと、彼がマラソンの信奉者のように書いてあったからです。正確には、マラソンではなく、ランニングですけど。

次に武道。おそらく現実的に考えて、空手を習うのが一番だろうと思っていました。ただ、これが一番の課題で、私が住んでいたところは鹿児島市でも郊外で、空手道場などはありませんでした。市街地にすらあるのかどうか分からない時代です。そこで頭に浮かんだのが、今考えれば笑ってしまいますけど「通信教育」でした。ちょうどこのころ、漫画雑誌の広告欄はブルース・リーの影響か、武道・武術の通信教育の広告満載だったのですよ。そういえば、ブルース・リーは「ドラゴンへの道(日本語吹き替え版)」の中で、自分の武術が「空手」ではなく、「拳法」だと強調していたな、と。雑誌の通信教育の広告にも「拳法」とか「中国拳法」とか書いてあるものが多かった気がします。そこで母親に頼みこみ、中国武術の通信教育を申し込むことにしました。父も母も、通信教育で武道、なんてかなり懐疑的だったみたいですけど、私はいたって真面目でした。

ただ、私は幼少時から運動が極端に苦手な子供で、小学校のころから肩こりに悩まされるような虚弱児です。体の基本的な使い方も分からない中学生に、難解な教材が分かるわけがありません。届いてみてびっくりしたのは、分解写真は本当に細かいのですけど、小さいんですよ。細部が全然分からない。結局スピードやリズムもまったく分からないし、技術習得には全く意味がなかったといえます。今なら、YouTubeなどにいろんな種類の武術の動画が公開されていて、幸せな時代だなあ…とうらやましい限りですが、当時は分解写真と文章での解説だけが頼りでした。

ちなみに今では、数多くの専門家による武術動画を、私が管理しているexfit TVで紹介させていただいていたりします(ご協力いただいている師範、専門家の皆さまに、感謝しております)。

通信教育の教材
オタッキーな子供には難解

こんな小さな分解写真と説明では、正直何も分かりませんね(笑)。後に形意拳修行者の動きを直接間近で見ることができたのですが、印象が全く違いました。もちろん、写真で撮るとこんな感じなんでしょうけど、実際の動きは細かいコツが積み重なった背骨や肋骨などが波打つような動きでしたから。

私のようなオタッキーな子供にはなおさらだったかもしれませんが、賢い、運動神経が発達した大人の男性が見ても、これだけでは絶対に再現できないでしょう。それを補うために「質問券」や「スクーリング」の制度はありましたが、スクーリングを担当する教官の苦労が偲ばれます。きっと、テキストで習得することの弊害しか見いだせなかったんじゃないかな?

双節棍道

結構いろんなおまけが付いてきて、ヌンチャクの教科書なども。この写真のヌンチャクを構えていらっしゃる方は荒川武仙師範という有名な方で、私が初めて東京に出てきて住んだアパートのすぐ近くに師範の道場がありました。一度、庭のお手入れをされている師範をお見かけしたことがあるんですが、まもなくこの道場もなくなってしまいました。

そういえば、このころに使っていたヌンチャクを最近まで使っていました。修学旅行の土産物屋で買ったのではなかったかと思いますが、ハッキリしません。私は大学時代に「笑っていいとも!」に出演したことがありますが、特異体質自慢のコーナーにジャッキー・チェンさんがゲストで来たことがあり、その際のデモンストレーションにも使用しました。

このヌンチャクは樫の木製で、中央を鎖でつないだものでした。最初八角形だったのをいつだったか自分で削って丸形にし、黒く塗り、さらに少しだけ鎖の部分が長くなるように棒状の部分を削ったりもしています。

残念ながら最近の練習で、突然鎖が切れてしまい、その寿命を終えたのですが、こういうことを考えると、鎖より紐でつないだタイプのほうがいいのかもしれません。少しでも劣化が見られれば、紐を交換するだけです。鎖だと留め具を打ち直したりしなければならないし、使用に耐えられる鎖の強度も検討が必要です。ちょっと面倒くさいですね。

さて、写真を撮るために引っ張り出した教材を確かめてみると、「太極拳」だけ見つかりませんでした。誰かに譲ったのか、一冊だけどこかに紛れているのか。今だと、実際に修行者に見せていただいた技や、YouTubeの動画などと照らし合わせて、形に関しては以前より再現性の高い練習も出来そうな気がするんですが…。でも、やっぱりからだの使い方まで完璧に再現することは無理だと思います。

それにしても、各教材もペラペラなのに高額。子供ながらに通信教育ビジネスの闇を思い知った私でしたが、それでもひとつだけ、この通信教育の教材で役立った項目がありました。柔軟運動として紹介されていた「 真向法」です。

真向体操法

これによって、まだ中学生だった私はかなり高いレベルの関節可動域を獲得することができました。高校入学時には、後に所属する空手部の最上級生で一番柔らかい先輩と同等なレベルに達していました。

この影響で、真向法については書籍も何冊か購入しているので、今後改めて触れることもあるかと思います。

しばらくはよく分からないまま、このテキストにしたがって中国武術の型を練習していましたけど、相手もいないし、今一つ武術をやっているという実感が湧いてきません。相当もやもやした気持ちでいたのですが…。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • […] 中学時代に申し込んだ中国武術と同じ会社が出していた通信教育プログラムですね(苦笑)。ブルース・リーの初期の弟子、James Yim Lee先生が著者となっています。 […]

  • […] 一つ目は「マス大山カラテスクール」のテキスト。Aさんは本部道場に通っていたそうですが、それ以前にはこの教材で練習していたのかもしれません。私が中学時代に申し込んだ形意拳〜太極拳〜八卦掌のテキストと比べてはるかに出来がいいと思いました。もちろん、実際にいろいろと習った後では、この資料だけで技が身につくとはほとんど思えませんけど、貴重な資料です。 […]

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