貴重な動画です

後ろ回し蹴り

私の場合はほとんど、自分の体の使い方の勉強とかちょっとした健康維持の目的でしか武術の練習をやらなくなっています。それでも最近公開された、総合格闘技の熊澤伸哉先生の一連の詠春拳を取り上げた動画は本当に興味深いものでした。

何が貴重かというと、詠春拳と総合格闘技のスパーリングがこの動画では見られる、ということです。通常詠春拳の動画というと、詠春拳同士とか、同門の片方の演者が他の格闘技を真似て攻撃してくるのに対応してみせるとか、あるいは詠春拳が他の格闘技の選手にメタメタにやられている動画くらいしか目にしません。

もちろん、熊澤先生の動画も試合ではなく、お互いにリスペクトをもってのスパーリングだと思いますが、このレベルでの交流動画というのは見たことがなかったので、本当に感動の心を持って拝見しました。

詠春拳のアレッサンドロ先生は詠春拳以前に30年も沖縄空手を練習されており、各流派の段位も5段位、6段位という達人先生です。なので、このスパーリング動画では詠春拳だけでなく、空手の技術も多く使われているように見えます。

特に、熊澤先生の速いタックルには空手と思われる技で対処しておられるように見えました。剛柔流空手道の十八(セーパイ)、という型の最後に似た動作があります。私が高校時代に剛柔流空手道を習っていたときに、師範に胴タックルをするように指示されたとき、その型の分解で投げられたことがあるのです。終了動作では私の頭は師範の両膝の間でコントロールされ、そのあとは…詳細な解説はここでは割愛しますが、危険な技だと思いました。

あれほどのタックルにしっかり対応されているアレッサンドロ先生の修行の深さはすごいと感じました。また、詠春拳と空手という、異なった武術を見事に融合されています。私は両方は無理だと思って片方の練習は完全に止めましたけれども、武術の本質の理解と修練ではこんなレベルに達することもできるのだと、公開されている範囲の術技だけでも本当に感動を覚えました。

また、2つめの動画のサムネイルにあるアレッサンドロ先生の肩甲骨と肩の動き。こちらも見事です。

タックル。この技術に対して私はほとんど対応を練習していないので、熊澤先生のようなあんなに速いタックルをされたら簡単にひっくり返されるな…と恐怖を覚えましたね。

私が東京に来たばかりの頃、高校時代にアマレス県大会で入賞したことがあるという友人とスパーリングしたことがあります。アマレスルール + 寝技という特殊なルールだったと思います。記憶では低い姿勢で要領が分からないままやってみたんですが、下半身へのタックルでもういいように転がされましたね。転がされて、なんか関節を取られてしまって。私がもがいて逃げるので関節は決まりませんでしたが、何も出来ないまま何度も何度も「倒され」「押さえ込まれる」感じが繰り返されたのはショックでした。

もう少しあとの話になりますが、詠春拳を習い始めた頃、私たちのスクールによく顔を出している門外の方がいました。アマチュアレスリングと八極拳を習っている、という方で、私より30kg以上体重が重かったようです。何かの話の弾みで「私のタックルを躱してみなさい」という話になって、少しの間アマレス対詠春拳みたいな感じになったことがありました。私はまだ空手のほうが得意だったのでタックルの入り際に(靴を履いての)前蹴りを合わせる動作や、最終的には空手のフットワークで躱していましたが、数分後ちょっとした隙を突かれ、胴タックルで持ち上げられてしまったのです。周りが暗かったこともありますが、非常に速く見えました。膝を合わせる暇もなかったです。思いきり蹴れないジレンマもありつつですが、結局自分の知っている技では対応できなかったので、意気消沈した記憶が残っています。

後者については詠春拳スクールの中で起こったハプニングだったので、先生が他の人に教えている間に勝手に他流の人とのスパーリングに応じたことについて、私は先生にかなり怒られてしまいました。同時にタックルへの対処法も習いましたが、習っただけで対応できるものでもありません。やはり本当にタックルができる相手にきっちり付き合ってもらって練習しないと身につかないですよね。

というわけで、タックルは未だにトラウマです。

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